楽曲レビュー「形而上学的、魔法」でんぱ組.inc
積極的に聴いてこなかったでんぱ組.incの曲
もともとでんぱ組についてはほとんど知らなかった。知っていることといえば、秋葉原で結成されたこと、もがちゃんがいたことぐらいだった。
私の好みとはたぶん違うんだろうな~と思いながら曲は一切聴いてこなかった。
あるきっかけがあって、興味本位で「形而上学的、魔法」のMVを見てみた。
そこからドはまり。狂ったように10回連続で聴き続けていたこともある。
この曲の魅力は言語化するのが難しい…
アルバム『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』収録曲M9
今回は「形而上学的、魔法」のレビューです。
中毒性のあるリズムとメロディ
これが私が感じたこの曲の特徴である。
たぶんリズムはジャズ特有のリズムのスイング(4ビート)が基本なんじゃないかと思う。Aメロのバスドラの叩き方的にもリズムの中に確実にジャズがある。
でも曲調的にも楽器的にも私にはジャズだと断定できなかった。3拍子では決してないのにどこかワルツの要素を感じる部分もあった。
エレピにジャズのリズム感があり、ストリングスにワルツの要素があり、頭の中でいい意味で訳が分からなくなって、違和感を感じた。
そして私は流れるようなメロディでありながら、全体として音程の高低差があるところにも引き込まれた。aikoは比較的高低差がある曲を書いていると思うが、またそれともどこか違う。
その目まぐるしく変わるメロディの裏でAメロBメロは基本的に2つのコードの繰り返しなのも面白いと思った。
他にもBメロの歌詞の次の部分で、コードが今までと大きく異なっているのも不思議に思った。
1番 今日を成りすましている
2番 ここに来たしかけている
普通変わるのであれば、サビもしくはサビの少し前だと思う。意外な所で変わっていて驚いた。もはや転調なのかそうでないかも分からなくなってくる。
私のキャパではそこまで分からない。
何とも言いきれない 不思議な違和感 がこの曲に存在していて、
それを正そうと何度も聴いてくうちに中毒性を生み出しているように思った。
作詞作曲の諭吉佳作/menも編曲のKanadeYUKも凄い。
哲学的な歌詞
哲学的な歌詞は諭吉佳作/menの真骨頂だと個人的には思う。
15歳の子が"形而上学"という言葉を使うなんて露にも思わない。
タイトルのインパクトに引っ張られて曲を聴いたのも事実だ。
でも歌詞を見ている限り、そこまで難しいことは言っていないと思う。
どんなに溶け込む模様を纏ったりしても
わたしを手放せないの
どんなに形が変わっても一人きりになっても
わたしがわたしのために見つけたいの
生かして わたしでいたかった ずっと
自分を偽って、みんなと同じようにして、社会に溶け込もうとしても、結局自分らしさは消えない。ただ "叶えていたかった" や "わたしでいたかった" のようにポジティブな言葉が過去形なので、まだ自分の本性は出せていない。でも見つけたいという意思はある。
自分らしさ=形而上で、自分らしさを出す術=魔法、と表現しているのかなあと私は思ったが、あくまでこれは予想に過ぎない。
考えれば考えるほど、本来の意味から遠ざかっている気がした。結局のところ歌詞の意味を理解するのは難しい。改めて諭吉佳作/menの凄さを思い知った。
ただ、この歌をでんぱ組が歌っていることに意味があり、説得力がある。
私はメンバーのことを何も知らないなりに調べてみた。こんなコメントが見つかった。
家から出られなくて、することもなくネットサーフィンばかりしていたときに、でんぱ組.incに出会いました。『W.W.D』のMVを初めて見たときに、アイドルソングの歌詞にはないような暗さ(いじめられ部屋に引きこもっていたなど)と、それを覆す力強さに惹かれ、こんなすごいアイドルグループがいるんだ!と衝撃を受けました。
このような過去を他のメンバーも経験しているようだ。
社会に適応しようとしてもできなかった過去がある彼女たちが今はステージの上で輝いている。
彼女たちはでんぱ組.incの中で、自分なりの生き方を見つけた。
"魔法" を見つけたのかも。
でんぱ組.incというアイドルを知れた。
私は今まで、でんぱ組.incを決して良いようには見ていなかったと思う。
このような曲を果たして歌えるのか、と思っていた。
間違っていた。
彼女たちは全身全霊で曲を届ける私の好きなアイドルだった。
考えてみれば、バンドを携えてライブをやったり、ロッキンでもLAKEステージの常連だったわけで。
果敢にオートチューンにチャレンジしているのもカッコいいと思った。
ダンスには触れられなかったが、MV本当にカッコよかった。
アイドルアイドルしている曲が苦手なのに、アイドルが好きという矛盾している私にとって「形而上学的、魔法」は本当に衝撃的な曲だった。
ただ曲名を見て、どうしても敬遠してしまうものもあるので、おすすめの曲があったらぜひプッシュしていただきたい。