「愛のレンタル」を聴き比べてみる。(私立恵比寿中学&マカロニえんぴつ)
「愛のレンタル」
もともと2019年12月に発売された、私立恵比寿中学の6枚目のフルアルバム『playlisit』M3に収録されていて、マカロニえんぴつのはっとりが書き下ろした曲である。
その後、2020年4月にマカロニえんぴつ2枚目のフルアルバム『hope』が発売され、その中のM8で「愛のレンタル」をセルフカバーした。
どっちも好きでよく聴いていたので、嬉しかった。
マカえんがセルフカバーをすると知ったとき、この両者が歌った「愛のレンタル」の違いがなんとなく気になって聴き比べたみた。
まだ片方しか聴いていない人も多いと思うので、少しでも興味をもってもらえるように書いていきたいと思う。
私立恵比寿中学 バージョン
マカえんと圧倒的に違うのはエビ中にはボーカルが6人いること、そしてそれぞれの声にはっきりとした個性があることである。
その6人のうち、この曲では 真山りか がフィーチャーされている。普段とは違って、艶感たっぷりに歌い上げており、そこが見物である。
もちろん、前提としてみんなめちゃくちゃに歌が上手い。
聴くべきポイント
1Aの 柏木ひなた の歌声の透明度の高いパート、
劣等、葛藤、ぜんぶ他人事
同じく1Aの 中山莉子 が歌った後のささやくようなフレーズ
先生の言うこと (いいこと)
は、マカえん版と比べた時にギャップをすごく感じる部分である。
エビ中単体としてならば、
1Bの 真山 の低音域の安定感だったり、2Aの安本彩花パート
ぎゅっと、そっと、もっと大胆に
のリズム感だったりが聴いていて心地よい。
そして、音について。ベースとなる音の構成はほとんど変わらない気がするが、何せエビ中の方がキーが高いので、曲が全体的に軽やかな印象にだった。
アウトロの最後の方はマカえん版には聴こえない(気がする)ストリングスがエビ中版では聴こえている、とか。
だからか、夢見心地な女性を歌の中で表現しているように感じた。
楽器隊のボリュームもマカえん版と比べて、小さく聴こえる。
弾いているのは同じマカロニえんぴつメンバーにも関わらず。
それによって、ソロでははっきりと、サビでは6人のユニゾンを全面的に聴けて、
1つ1つの声に歌詞を堪能できる。
マカロニえんぴつ バージョン
私は「愛のレンタル」を先にエビ中から聴いた人なので、マカえん版を聴いたときには歌い方の違いに驚愕した。
まず
「おぇ」
という初っ端の声。
……はい?って感じだった。
聴き続けていると、はっとり の歌声もいつもとは違っていて、母音がすごく伸びたねっとりとした歌声だった。ここから、酔っ払った痛い男がこっちでは主人公になっているのだと思った。
同じ歌詞で比べてみても、1Aの「劣等」の「れ」が巻き舌だったり、「(いいこと)」をエロく歌ってみたり、1Bの「溜めては」を極端に低く汚く(褒めてます)歌ったりしている。
そのような歌い方からまた違った「愛のレンタル」の世界観が感じられた。
酔った主人公が妄想・幻想に耽っている姿が完全に見えた。
ところどころハモリが入ってくるのも大きな違いである。
私にはハモリを敢えて揃えていないように感じた。それによって、酔ったときに感じる視覚のダブりみたいなものを表現しているのではないか。
音に関しては、エビ中はキーボード&ベースが主軸なのに対して、マカえん版ではギターがメインとなっている気がする。
基本的に はっとり の声はインパクトが大きい。
だから、その声に負けないような強いギターサウンドを取り入れているように思う。
同時に男の泥臭さを出すためにメインとしているのかもしれない。
注目すべきはアウトロ。
アウトロのギターのメロを、はっとり が同時に歌っているところだ。これはエビ中版にはない。世界観にぴったりの極めつけのいい味を出している。
どのような設定でこの曲を書いたのか、マカえんバージョンを聴いて初めて分かった気がした。
それぞれのこだわりが見えてきた。
「愛のレンタル」デモがあのはっとり節ガンガンの状態で送られてきたとすれば、エビ中はそれをよく綺麗に整えたなあと思う。
マカロニえんぴつが好きな人なら、この曲のメロディラインがTHEマカロニえんぴつだと誰が聴いても思うだろう。それをここまで癖をなくして歌えているのは、エビ中の中で確固たる曲の世界観が形成されているからだと思った。
逆にエビ中版を聴いている限りでは、マカロニえんぴつの「愛のレンタル」がこんな雰囲気の曲になると思わなかった。良い意味で期待を裏切られた。
マカえんはこの曲をさらに癖の強いものに仕立て上げていた。
もう片方の曲も聴いてみてはいかがでしょうか。