ライブレポ 私立恵比寿中学 『エビ中 秋麗と轡虫と音楽のこだま 題して「ちゅうおん」』(9/20生配信)
待望の有観客ライブ
音楽と歌を堪能できるとファンからの評判の高い私立恵比寿中学秋の恒例ライブ『ちゅうおん』。コール・サイリウムなし、着席鑑賞というアイドルのライブとしては珍しいスタイルをとっている。
この形式が今の時代に思わぬ形でフィットした。
9/19, 20で行われた『エビ中 秋麗と轡虫と音楽のこだま 題して「ちゅうおん」』、これがコロナ禍での初めての有観客ライブとなった。
現地にどうしても行きたかったがのっぴきならない事情で断念し、最終公演の生配信を見た。
音を楽しむってこういうことなんだなと思ったライブ。
それでは。
Inst.
1. 風になりたい (THE BOOM cover)
2. 君のままで
3. 自由へ道連れ
4. SHAKE! SHAKE!
5. 誘惑したいや
6. 感情電車
7. 23回目のサマーナイト (バラードver)
ソロ歌唱パート
8. ノーダウト/officail髭男dism (真山)
9. タマシイレボリューション/Superfly (星名)
10. Wonderland/iri (柏木)
11. 金木犀の夜/きのこ帝国 (安本)
12. 糸/中島みゆき (小林)
13. 愛のために/奥田民生 (中山)
14. 紅の詩
15. バタフライエフェクト
16. スターダストライト
17. まっすぐ
18. 踊るロクデナシ
19. 星の数え方
20. 23回目のサマーナイト
ライブレポート
Part1
ライブは開始時間丁度に始まる。ボサノバ調の心地よいバンドセッションの音とともにエビ中メンバーが登場。
1曲目はTHE BOOM「風になりたい」のカバーでスタート。小林歌穂の温かみのある歌い出しから会場は一気にリラックスムードに。軽くステップを踏んでリズムを取りながら歌う。
Part2
自己紹介と挨拶をはさみ、アレンジでイントロのブラスが印象的だった「君のままで」。普段はもがくような表情を見せながら歌う安本彩花が、今回は晴れやかに歌い上げる。サビのコーラスで力強さもそれを後押ししていたのかもしれない。
「自由へ道連れ」は真山・中山をはじめとして全体的に控えめに歌っていて楽器の音を聴かせている印象を持った。2番前間奏のバイオリンの駆け上がりの緊迫感がとても良い。
そして小林の明るいトーンが光る「SHAKE! SHAKE!」。
エビ中の初期曲にあたる「誘惑したいや」は当時とは精度が全く違う。
柏木ひなたの"クラクラしそうな想いで"の"くらくら"のミックスボイスの部分、星名美怜が地声で歌える高さの落ちサビを敢えてファルセットで歌っていたところにちゅうおんアレンジが加わったことによって、曲がしなやかになっている。
甘酸っぱいような、心をくすぐられるような気分になった。
間奏のドラムにボサノバのリズムを盛り込みポップに仕上がった「感情電車」が続き、メンバーは着席して歌うモ―ドに入った。
アコギの入りからしっとりと始まったのは「23回目のサマーナイト」のバラードバージョン。スタンダードがポップな曲の雰囲気がガラリと変わるのがちゅうおんならでは。しみじみと感慨深く今年の夏を思い出している様子を思い描いて歌っていたような気がした。小林と中山が目を合わせながら歌うシーンからも。
特に2サビの真山りかのパート、"たった一瞬触れた" を歌う時の彼女の表情がとても苦しそうで。
23回目の夏の恋は叶ったのだろうか…?
なんて思いながらこのセクションが終わった。
Part3
ここからは恒例のソロ歌唱タイムに突入。次に歌う人の最近のちょっとした出来事のトークを交えながら、それぞれが別アーティストのカバーを順に歌う。
1人目の真山はofficial髭男dismの「ノーダウト」。
原曲はポップ要素が比較的強いが、彼女はメリハリをつけて艶やかにけだるそうに歌う。全身で曲を表現しており、会場がそのムードに包みこまれた。
曲が終わって素に戻る瞬間までが見所。
続いては星名。Superflyの「タマシイレボリューション」を歌う。
正直とても意外な選曲だった。音程が高いところでも根底にドスの効いた低さが感じられ、原曲へのリスペクトが見られた。間奏のフェイクも力強さがあり、昔の彼女のままだったら絶対にここまで歌えなかっただろうなと思った。
柏木はエビ中にも楽曲提供をしてくれた iri の「Wonderland」を選んだ。
リズムの取り方、フォールやしゃくりを用いた音と音のつなぎ方、発音、声をこもらせた歌い方、伸びのメリハリなどすべてがスムーズで滑らか。聴いていてとても心地よかった。もうさすがとしか言いようがない。
現在活動休止中のきのこ帝国の名曲「金木犀の夜」を歌ったのは安本だ。
曲の世界観とちゅうおんが開催された季節、そして時間が見事にマッチしていて歌い出した瞬間浸れた。何かを思い浮かべながら、落ち着いて、柔らかく歌う姿が今でも目に焼き付いている。
中島みゆきの「糸」を選んだ小林。
楽器の音に耳を傾けながら歌っていた。これを聴いた人たちの共通認識はきっと "母のよう" 。彼女が持つ独特のあったかい歌声が徐々に成熟されて大人の女性の声になっているとこの曲で感じた。表情にも滲んでいた。
ものすごく渋いチョイスをしてきたなあと思った。奥田民生のダルそうでかすれたような歌声とはまた違った良さ。バリバリのギターサウンドに負けない地声の迫力を感じた。歌っている中山は誰よりも楽しそうで周りを笑顔にしていった。
Part4
メンバーが席から立ち、ライブも後半戦へ。
コーラスが入ることによってゴージャスになった「紅の詩」、炎が燃え盛る中言葉を投げつけるように歌う「バタフライエフェクト」とテンポよく進んでいく。
続いて披露した「スターダストライト」は私自身初めて聴く曲だった。そもそもがめちゃくちゃ良い曲良い歌詞で言葉や音に聴き入った。星空が浮かぶ演出がぴったり。エビ中が曲に抱く共通のストーリーというものはなく、ひとりひとりの楽曲の捉え方が異なって見えた。
「まっすぐ」は楽曲途中から再び立ち上がって歩き出す瞬間に前に進んでいく意思表示みたいなものを感じた。そこでもぐっとくるものがあったが、ストリングス隊が入ってくる2番では本当に泣きそうになった。
Part5
トークをはさみ、ラストスパートとしてギターの軽快なカッティングと共に始まったのは「踊るロクデナシ」。アレンジによってファンキーに。
特に好きだったフレーズが安本の"いつも通りのスマイルで"の"スマイル"のはき出すような発音と柏木の"just a feeling"の吸い込まれていく歌い方だ。正反対の歌い方ではあるがどちらも曲調に似合っていた。
この曲では歌声の滑らかさと楽器のポップさが共存している印象を持った。
そしてまたもやボサノバ調にアレンジされた「星の数え方」を歌う。途中で上ハモと下ハモが入れ替わるという高度なことをやってのけているのを今回初めて知った。
最後の全員でのハモリの揃い具合には鳥肌が立った。
最後の曲は「23回目のサマーナイト」。
思ってもみなかった展開に驚いたが、ラストにぴったりの曲調だなと納得。先ほどとはうって変わりキラキラ。ギターカッティングにシンセが入り、ベースのうねりが加わりとてもポップ。
Cメロ前に個々のフェイクを入れ、"エビ中でサマーナイト" "みんなでサマーナイト"とハモる。
気づいたら自然と体が揺れていた。きっと会場も画面越しも多幸感で溢れていた。
最後は「また会おうね!」で締めて、ライブが終了。
生演奏をスタンダードに
まず思ったのが、観客が入るだけでライブの雰囲気がまるで違うこと。
お客さんの手拍子も楽器だったんだなと感じた。
原曲では感じ得ないことをアレンジが施されることで別の面から楽曲を聴けるのがちゅうおんの面白さ。今回は全体的にボサノバ調だった。
アレンジがあるのだったらやっぱりオケより生演奏のほうが良い。
エビ中の歌も今回は生配信だったので無修正。無修正でこれは本当にレベルが高い。
だから生演奏との相性は抜群。
これはもうエビ中ライブのスタンダードを生演奏にしないともったいない。
音を楽しむという点から見ても。