おんがくあれこれあらかると

音楽に関する長いつぶやき

ライブレポ 私立恵比寿中学 『エビ中 秋声と螻蛄と音楽の輝き 題して「ちゅうおん」』(9/26 第1部)

新体制の挑戦

雨が降りしきる秩父の山奥で今年も、私立恵比寿中学の恒例ライブが開催された。

サイリウム・コール無しで着席指定という制約。

もはや "コンサート"と表現する方がよいのかもしれない。

 

『ちゅうおん』が3人の新メンバーを迎えて帰ってきた。

ここでは音楽のみを聴かせることもあって、歌への期待も他のライブより高い。

 

ファミえんの中止によって新体制初めてのワンマンがこのライブになったのは、メンバーにとって相当なプレッシャーだっただろう。

 

今回はその挑戦の一部始終を書き記したレポです。

 

 

セットリスト

1. LIFE feat. bird (MONDO GROSSO cover)

 

2. summer dejavu

3. 誘惑したいや

4. 朝顔

5. 頑張ってる途中

 

6. COLOR

7. あなたのダンスで騒がしい

8. フユコイ

9. イエローライト

 

ソロ歌唱メドレー

10. シャングリラ/チャットモンチー (小久保)

11. CITRUS/Da-iCE (安本)

12. 真夜中のドア~stay with me/松原みき (真山)

13. ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ/原田知世 (風見)

14. 黒毛和牛上塩タン焼680円/大塚愛 (小林)

15. 深夜高速/フラワーカンパニー (桜木)

16. GLAMOROUS SKY/NANA starring MIKA NAKASHIMA (星名)

17. ナンダカンダ/藤井隆 (中山)

18. 白日/King Gnu (柏木)

 

19. 青い青い星の名前

20. 自由へ道連れ

21. なないろ (THE FIRST TAKE ver.)

22. 約束

23. 蛍の光(Demo)

24. イヤフォン・ライオット

 

 

ライブレポート

Part1

ドラムの演奏を入り口とした、1つずつ楽器が加わる形のオープニング。

松明の火がボッと燃えると同時に、柏木ひなたが歌いながらステージ上に姿を現した。

1曲目は、MONDO GROSSO「LIFE feat. bird」のカバー。

 

そこからラストの安本彩花までペアを交えて、メンバーが順番に登場する。

サビでは9人が歌い、思うままに揺れる。

 

特に印象的だったのが、小林歌穂・風見和香ペアの系統の違う優しい歌声と、
星名美怜・桜木心菜ペアの、星名の高音を支える桜木のハモりだった。

 

 

Part2

挨拶・自己紹介を挟み、オールユニゾンの「summer dejavu」を。ゆったりしっとりという空気を醸しながら、どこかフレッシュな風も曲中に吹かせた。

 

 

新メンバーの最終オーディション曲であった「誘惑したいや」は熟練の安定感があった。

1Aは『ちゅうおん』アレンジによる、ピアノを引き立たせるシンプルな構成。そこに歌い出しの星名の表現力が加わって、エモーショナルに展開されていく。
歌詞にぴたりとはまる小林や風見の歌声には胸がいっぱいになった。

誘惑したいや

誘惑したいや

  • provided courtesy of iTunes

 

 

軽快なブラスと共に始まったのは「朝顔」。ドラムロールに合わせて小林が小刻みに手を動かす。二手に分かれる歌割では先輩メンバーの6人が3人を下支えしながら歌う様子が感慨深い。 

 

 

そのまま間髪入れずに「頑張ってる途中」がスタート。サビでは共通の振り付けで声が出せないながらも客席と一体感が生まれる。

落ちサビでは小久保柚乃のパート "しょんぼりしたりも時々するけど" から
"でもほら声を出して" の真山りかへのリレーによってエビ中の関係性が垣間見えて
歌割がとても良かった。

頑張ってる途中

頑張ってる途中

  • provided courtesy of iTunes

 

『ファミえん2021』を彷彿させるようなパートとなった。

 

 

Part3

ここで少しMCが入る。

 

続く6曲目は全体を通してストリングスの音が響く「COLOR」。

柏木→安本のCメロの歌割順を聴いては、あ、2人が揃ったんだなと嬉しくなる。サビではメンバーが交互に手を上げて控えめに踊った。

 

 

「あなたのダンスで騒がしい」は原曲が打ち込みだからこそ、バンドが映える1曲となった。疾走感のあるドラムに、指がねじれそうなピアノのメロディ。エビ中バンドの演奏力にも目を見張る。

そして締めの吠えるような中山莉子のフェイク。この曲ではしなやかでありながら強さが前面に感じられた。

 

 

壮大なストリングスと力強いドラムが対峙するかのようなイントロだった「フユコイ」。"本当はすごく寂しいんだよ"と歌う桜木の、喉につまる声が切ない。

 

「イエローライト」はアコースティック調で歌う。歌割は6人に振り分けられていて、

安本が入り全員揃ったバージョン初めて聴いたのだが、これがまたしっくりくる。今年の『ちゅうおん』をもって活動を休止する柏木への応援歌にも聴こえた。

 

 

Part4

カバー曲のソロ歌唱パートは昨年とは打って変わって、メドレー形式での披露となった。

 

 

1番手の小久保はチャットモンチーの「シャングリラ」。

小気味いいベースが基軸となっている名曲である。音程とリズムを集中して歌う姿がこの曲の可愛らしさを別の意味で引き出している。

まだ何色にも染まっていない小久保だからこそ歌詞がド直球に刺さる。

シャングリラ

シャングリラ

  • provided courtesy of iTunes

 

 

ドラマ主題歌として話題になったDa-iCEの「CITRUS」を歌ったのは安本。

ストリングスの音色によって楽曲のスケールがぐぐっと上がる。あのハイトーンは相当難易度が高いが、それをさらりと決めてしまうのがなんとも安本らしい。

落ちサビのアカペラは、圧倒的な声量でと熱を帯びた歌声で震えた。

CITRUS

CITRUS

  • provided courtesy of iTunes

 

 

続けて真山は松原みきの「真夜中のドア~stay with me」を。

コーラスの2人とのハモリが綺麗で、息づかいから大人っぽさが感じられる。

サビでは、芯を保ちながら彼女の歌声は野外でどんどん伸びていった。

真夜中のドア/Stay With Me

真夜中のドア/Stay With Me

  • provided courtesy of iTunes

 

 

風見が歌ったのは、原田知世の「ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ」。

ピアノをバックに少し緊張した面持ちながらも、歌声は柔らかい。 

特殊な歌唱技術は伴わずとも声量も表現力も素晴らしく、将来の歌姫が見えた気がした。

 

 

メドレー中盤にあたる小林の選曲は大塚愛の「黒毛和牛上塩タン焼680円」だ。

小林のアカペラから演奏が始まる。"大好きよ" という歌詞が、伸びやかな声と共にふんわりと空間を包み込む。

情熱的な原曲と雰囲気が全く異なっていて、楽曲を自分色に染めてしまうのが小林の凄みだなと感じた。

黒毛和牛上塩タン焼680円

黒毛和牛上塩タン焼680円

  • 大塚 愛
  • J-Pop
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

 

続いては桜木。フラワーカンパニーの「深夜高速」を歌う。

ハスキーな声がバンド演奏に負けず渋さを出している。

サビの"生きていてよかった" の部分では必死な様子が伝わってきて聴きごたえがあった。

深夜高速

深夜高速

  • provided courtesy of iTunes

 

 

NANA starring MIKA NAKASHIMAの「GLAMOROUS SKY 」を歌うのは星名だ。

彼女に割り振られた曲は歴代のものを見ても、毎度挑戦的だなあ、運営は鬼か、と思う。

それでも星名にはやってやろうと全力で歌う姿勢が見えていて、磨き抜かれたハイトーン、パワフルな歌を堪能できた。

GLAMOROUS SKY

GLAMOROUS SKY

  • Nana & 中島 美嘉
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

中山は藤井隆の「ナンダカンダ」を。

とびきり明るく本当に楽しそうに歩きながら歌っていた。のちのMCでメンバーに指摘されるほど。

前回のちゅうおんもそうだったのだが、彼女のソロには周りを巻き込んでいく強さがある。台風通過後のあたたかい突風みたい。

ナンダカンダ

ナンダカンダ

  • provided courtesy of iTunes

 

 

9曲メドレーのトリは柏木でKing Gnuの「白日」。

歌い出しの1音目から うわ上手い… という声が思わず漏れてしまった。

会場の空気も一瞬で変わったように思える。

関ジャムでヒャダインが話していた、柏木の地声とファルセットの転換の美しさがよく分かる選曲であり、パフォーマンス。Cメロの気迫には圧倒された。 

白日

白日

  • provided courtesy of iTunes

 

 

Part5

ソロメドレーの感想を交えたMCの頃には雨もほとんど上がり、明るくなってきた秩父の空。

 

ここではまず、伸びやかなメンバーの歌とまっすぐなギターの音が映える「青い青い星の名前」、初期の和気あいあいとしたパフォーマンスを彷彿とさせる「自由へ道連れ」を披露。コーラス始まりによって、会場のボルテージがぐんぐん上がっていく。

 

 

ちゅうおんらしい曲、とうって変わって落ち着いて歌ったのは「なないろ (THE FIRST TAKE ver.)」。6人の真骨頂であるこの曲に新メンバーの声が加わって華やかに。

あの公開時の感動をもう一度生で聴けてただただ嬉しかった。

 

 

「約束」は桜木のソロパートの低音が一見淡々としているように聴こえたのだが、転調後の柏木の感情を揺さぶる歌い方までの一連を聴いて考えると、この曲のモデルは強がりで、寂しがり屋で、でも希望を持った子だったのかな、と感じた。

アウトロの安本のフェイクを聴いては、掛け合いで歌える人が出たら面白いなぁと思う。

 

 

そして1人ずつ大切そうに歌い上げる「蛍の光(Demo)」。

小久保のパートの高いキーがとても良くてそこに意外性があった。

ただ、実はふわふわと夢見心地のようになってしまい、あまり覚えていない。そんな中でも安本の音ハメは抜群で、気持ちが良かった。

蛍の光(Demo)

蛍の光(Demo)

  • provided courtesy of iTunes

 

 

そんなしっとりとした雰囲気を吹き飛ばすかのように全員立ち上がり、ラストの「イヤフォン・ライオット」を披露。ボンゴ・コンガのリズムにファンも思わず踊り出す。

 

多幸感いっぱいにライブを締めくくった。

 

 

個々の色がくっきりと見えた

正直新メンバー3人の歌声は6人の歌の中に埋もれてしまうと思っていた。それくらい経験の差は大きいと思っていたからだ。

でも素のままで歌ったその声に色が見えた気がした。

 

エビ中のメンバーだけではなく、バンドメンバー含めた23色がこのライブにはあった。

楽曲を見てもユニゾンの曲、9人の歌割、6人の歌割で変わってくる。

もはや何色だか分からない。

 

ライブへの不安が予測不能な色の混ざり合いに思えてきて、聴いていてワクワクした。

個性となる色を活かし、この『ちゅうおん』という挑戦をエビ中はやってのけたのだ。

 

 

9色の個性が完全に混ざり合った先では、どんなステージを描いてくれるだろうか?

 

 

 

↓昨年のライブ記事はこちらから

yakkofeemusiclog.hatenablog.com