ライブレポ sumika 『Live Tour 2021 花鳥風月』 (11/3・ファイナル)
遂に実現した大舞台
5月から半年の間駆け抜けてきた、sumikaのツアー『花鳥風月』。
追加公演が7月下旬に発表され、ファイナルがさいたまスーパーアリーナに決まった。
ここでは昨年、延期から奇しくも全公演中止となった『Daily's Lamp』ツアーでsumika史上最大級の会場として観客を迎えるはずだった。
そんなsumikaにとってもファンにとっても念願の詰まったライブのレポです。
セットリスト
1. Jasmine
2. 祝祭
3. Flower
4. ふっかつのじゅもん
5. イコール
6. わすれもの
7. Jamica Dynamaite
8. 溶けた体温、蕩けた魔法
9. 願い
10. 本音
11. 惰星のマーチ
12. Shake&Shake
13. 絶叫セレナーデ
14. Traveling
15. Late Show
16. ライラ
17. 明日晴れるさ
18. センス・オブ・ワンダー
Encore
19. Babel
20. ファンファーレ
21. Fiction
22. 晩春風花
ライブレポート
Part1
ステージと平行に青い光が差し込み、"チリーン"という鈴の音で紫に変わり、ゆっくり回り始める。会場いっぱいに照らされたところで幕が下りて、sumika&ゲストメンバーが登場。
冒頭にジャジーなピアノが鳴り響く「Jasmine」からライブがスタート。"12345"の合図を観客は手でつくり、"この街から始めよう" とsumikaは堂々と開幕宣言した。
赤の照明を浴びて、バキバキの格好良さを見せたのは「祝祭」。
Gt. 黒田を基軸としたギターアンサンブルの分厚い音色で体の芯から震えた。
「Flower」は軽快なギターに乗って、客席のあちらこちらで飛び跳ねる様子で楽しさが倍増。
黄色のライティングが施され、ひまわりのような演出だな、と思った。
"ヘイヘイ"と誰もが心で唱えるであろう「ふっかつのじゅもん」。間奏のギターソロの裏で打数が速くアレンジされていた気がして力強さと疾走感が半端でなかった。
軽く挨拶と「絶対に楽しませる!」という意気込みを語り、「イコール」を歌う。サビの全員でのコーラスは爽やかで気持ちいい。
Key. 小川がメインボーカルとなる「わすれもの」では、その柔らかい歌声を会場中が聴き入っていた。紡ぎ出される歌詞に胸がきゅっとなる。
ゲストメンバーも楽器を持って演奏したのは、「Jamica Dynamaite」。
"Jamica Dynamaite" のコーラス部隊に重なるギターやピアノ、うねりまくっていてめちゃくちゃ難しそうなベースのフレーズでオシャレな雰囲気を醸し出す。
ハモリで意外や上を歌うVo. 片岡は色気の塊だった。
Part2
自己紹介・MCを挟んだ後は観客を座らせて、ゆったりとしたムードでライブが進む。
柔らかなタッチのピアノ演奏から始まったのは、「溶けた体温、蕩けた魔法」。徐々にその音は強くなっていく。
大サビでは片岡と小川が目と呼吸を合わせながら丁寧に丁寧に歌い、弾く。
続いて苦しげな表情での歌い方が頭に残る「願い」、淡い光の中温かさが染み渡る「本音」と披露していく。
実はこの2曲は半分寝ながら聴いていた。
穏やかで、居心地が良くて。
直前のMCで寝ながら聴いていてもいいって言ってたから、なんだか大丈夫な気がしている。
そんな寝ぼけまなこをブラスがアクセントとなる「惰星のマーチ」が吹き飛ばす。そしてパキっとしたドラムが全体を引き締める。
私はDr. 荒井が叩くsumikaのドラムが結構好きだったりする。
流れるようなピアノのイントロが印象的な「Shake&Shake」。"Stand Up!!!"と歌いながら、まるでおもちゃ箱のような、明るくハッピーな空間へと観客を誘う。
"史上最強の今を信じている" という歌詞はこの状況下で特にぐっとくる。
アッパーな展開は止まらない。「絶叫セレナーデ」ではクラップを煽り、会場の一体感がぐいぐい増していく。
かと思えば妖しいムードが漂い始め、場内が紫色に染まっていく。
"いいと思ってない"と片岡1人で歌い始め、コーラス隊が1人ずつ指さされて歌に加わる。全員でのアカペラ終わりの最後の1音、ハモリが綺麗だなあと余韻に浸ったところで「Traveling」本編が始まる。
こんな大人びた曲なのにゲストメンバーの矢澤壮太の動きに癖がありすぎて、集中できん。それがまたライブの面白みを出していた。
再び急加速し始めてThe バンド曲の「Late Show」を披露。落ちサビをためて歌うことで減速していき、そこからさらに駆け上がる怒涛の展開を見せる。
9曲ノンストップの最後を飾ったのが「ライラ」。この日の私の中でのハイライトの1つとなった。Aメロとサビの部分、音源で聴くより軽い重いのギャップが凄く、その繰りかえしに中毒性があった。
重たいサビではまぶしいぐらいの照明、落ちサビでは片岡・小川の熱を帯びた掛け合いに痺れる。
そしてアウトロ移行のときのリズムの切り替えがえぐすぎる。(語彙力)
Part3
MCでは「温かいものは賞味期限が短い。だけどそんな存在でいたい。」と話す片岡。
そんな彼らが歌う静かな応援歌、「明日晴れるさ」。
個人的に一番苦しい時期だった7月に、東京ガーデンシアターで聴いた時のことが思い出された。きっと良いことがあるよ、という意味を含んだこの曲が寄り添ってくれた。
"あなたの虹はきっと綺麗だよ"の歌詞と呼応するように、虹色のライティングが浮かび上がった。
そして"進め"というフレーズが生み出す明日への行進曲「センス・オブ・ワンダー」を歌う。間奏ではメンバーがみなジャンプをしながら演奏をし、歓喜の舞を堪能して本編が終了した。
Encore
鳴り響く手拍子の中現れたのは2人。
遠目の第一印象は片岡・黒田?という感じだった。
いきなり不気味でエレクトロニックがサウンドが流れ始め、何も告げずに新曲の「Babel」を披露。ゲストにDJのGeorge(MOP of HEAD)を迎えて、1DJ・1Singerという形態で演奏された。
sumikaでは聴かないような狂気の沙汰に打ちのめされながらも、新境地の幕開けにゾクゾクしていた。
Youtubeでこの様子を生配信していたことをMCで明かし、私含め観客をざわつかせた。
それも束の間一面ブルーの海で、「ファンファーレ」を歌い上げる。ロックの中にキラキラしたピアノが入り、ほとばしる青春を感じた。
そしてポップで多幸感たっぷりの「フィクション」。自然と沸き起こる手拍子、メンバーが顔を見合わせて演奏する姿がフィナーレを連想させる。
MCではファイナルということもあってメンバー4人が胸の内を明かす。
小川は、sumikaはライブをするために、お客さんも楽しむために準備してきたと話す。そんな相思相愛の関係が嬉しそうだった。
荒井は、悔しいことがたくさんあったとしながら、日本津々浦々の美しい風景を取り戻しに行こう、と『花鳥風月』ツアーのコンセプトを掲げたと話す。
黒田は、日々の小さな積み重ねが次への第一歩だと言い、こうやってまたこの景色が見れて幸せと会場を見渡す。その表情は晴れやかだった。
最後に片岡は、次があるのは今いるあなたのおかげとひたすら感謝を述べる。今日こうやって来てくれるからこそ自分たちはやっていけるのだと、苦しい日々を振り返り喜びを噛みしめていた。
舞台が、客席が桃色に染まり、アンコール最後の曲として始まったのは、コロナ禍に作られた「晩春風花」。
私の大好きな曲。以前は別の解釈でレビューを書いたこともある。↓
yakkofeemusiclog.hatenablog.com
あのMCの後だとどうしても去年の苦しかった時期を思い出さざるを得ない。
"戻りたい春" と歌いながらも、"散らせど実れる" "夏秋冬でも" と季節は巡り廻ることを描き、それがポップな曲調と相まって決して悲観的にならずに、ポジティブに前を向こうという想いが伝わってくる。
大サビでは花びらがステージを舞う。そして花が咲いたことを匂わせる歌詞。
"離さない春"。ようやく手にしたこの瞬間を大事にするように。
最後のラララの大合唱は、声は出せないけどきっとみんな心の中で歌っていたと思う。
アウトロ終わりでは片岡が叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。「生きててくれて」。
ちょっぴり苦しいけどあったかくて嬉しくて楽しい、プラスのエネルギーが詰まった歌と演奏と演出。
このツアータイトル『花鳥風月』を体現したようだった。
さいたまスーパーアリーナに季節外れの春風が吹き抜けた。
我慢の先に見えたもの
楽曲のバリエーションが一層豊かになり、観客を目の前にして初披露する曲もたくさんあった。まさに『花鳥風月』。
公演ごとにセトリが入れ替わるのだが、そんな中でも今回は歌詞に注目すると勇気づけたり、背中を押したり、元気になれるような楽曲が目立った。
それは一度の延期と一度の中止を強いられたこの場所でのライブ、かつファイナルだったからかもしれない。
厳しい季節を越えたその先には、sumikaもファンも見たかった、いつも以上に満面の笑みと音楽のある光景が広がっていた。
会えなかった分の想いも一緒に溢れ出していたライブでした。